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隠匿の令嬢
第13章 知られざる秘密
馬車から降りたとき、アリエッタはまともに馭者の顔が見れなかった。あられもない声を聴かれてしまってるだろうと、我に返ったときには死んでしまいたくもなった。
レオは涼しい顔で礼を言っており、憎たらしいくらいだ。
だが邸に入ると使用人から口々に「おかえりなさい、アリエッタ様」と声をかけられると、幸福に満たされ、すぐに忘れてしまった。
「うちの連中ときたら、俺が見えてないようだな」
レオが今朝と同じような台詞でぼやく。やはり嬉しそうに。
10年間、たくさんのことがあった。痼は皆の心に残っているだろう。
けれど雨季がいずれ去るように、心に降りしきる雨もいつかは去る。
「ただいま」
アリエッタはこれまでないほど満面の笑みで、邸に戻れた喜びを噛み締めた。
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