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隠匿の令嬢
第14章 束の間の幸福と崩落の足音



 ザキファス邸を訪れてから一ヶ月が経とうとしており、アリエッタはこの10年でもっとも穏やかな気持ちで過ごしていた。


 封じ込めてきた過去と向き合い、正面から受け止められたこともあるが、安穏を助長しているのは一週間に二度は届く母とリリスからの手紙であった。


 綴られているのは何気ない日常に起こったことであったり、アリエッタの様子を窺うことであったり。


 そしてアリエッタも手紙が届く都度返事を返した。


 時々困るような内容──レオについて綴られてることもあるが、誤解させたままは悪いとは思いつつ、心配をかけたくないがために曖昧にはしていた。


 それ以外はアリエッタも学校のこと、ニーナのこと、絵のことを綴っていた。


 この日も母の手紙に同封されるリリスの手紙を青空の下、四阿で読み耽っていた。


「まぁ!」


 その内容にアリエッタは驚き、声を上げた。







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