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隠匿の令嬢
第3章 肉食獣は紳士の仮面を被る
「冷めないうちにどうぞ」
ギルデロイは白磁のカップに注がれた、リンゴの匂いに似た香りを漂わせる、黄金に輝くカモミールティーをアリエッタに手渡す。
アリエッタは礼を言い、恐縮しながらカップを受け取り口をつける。カモミールの甘く爽やな香りが口腔を満たし、気持ちが和んでいく。
ギルデロイはアリエッタが描いていたキャンバスを覗き込む。
「ふむ。これは聖女が天啓を受けている場面かな?」
ギルデロイの言った通りの構図で、アリエッタは頷く。
淡い青の花弁を広げる花畑で、美しい聖女が光りに照され、彼女の周りには天使が羽根を広げ彼女に神の言葉を告げている。
「どうでしょうか?」
「素晴らしいよ。しかし……以前より絵のタッチが柔らかくなったようだね。なにか心境の変化でもあったのかね?」
「い……いいえ! ありません!」
珍しく慌てるアリエッタにギルデロイは愉快そうに白ひげを震わせる。
「いやいや、結構。キミも年頃だ。色々とあるのだろう」
茶目っぽくギルデロイにウインクされ、アリエッタはどう対応していいか戸惑い、俯いてカップを見詰めるしかなかった。
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