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隠匿の令嬢
第15章 病みゆく心



 “抵抗”がなかったのは、すでに馴れてしまったアリエッタを抱いて眠るレオの腕がなかったから。薄闇で眺めるレオはアリエッタに背中を見せていた。


 レオとて常にアリエッタの方を向いて眠っているわけではないだろう。寝返りだってうつこともある。


 アリエッタが眼を醒ましたとき、偶然反対を向いていただけ──精神が正常であればその考えにも至ったであろうが。


 このときのアリエッタはそんな考えよりも、レオの背中がもうアリエッタを必要としていないと物語っているように思え。


 規則的に上下するレオのその背中に、アリエッタは要らないのだと言われているようで。



 見開く双眸に映し出す景色がひび割れ。


 瞬いた瞳から一筋の涙が零れると、ガラガラと硝子が砕け落ちていく。


 残されたものは形だけ保った光景。




 そしてアリエッタの世界から──色が失われた。








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