この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
隠匿の令嬢
第20章 アリエッタの愛
「やっぱりキッシュの気のせいだったじゃん」
「うん、かな……」
レオの背後、ナキラたちがボソボソと話すのに振り返る。
「なんの話だ?」
二人は顔を見合わせると、ナキラが気まずそうに語る。
「その、実は……。キッシュが言うにはアリエッタ様が病気じゃないかって」
「病気? どういうことだ」
「僕もよくわからないんですけど、以前王女さまがいらしたとき、アリエッタ様が花の色を間違えられたんです。だから色が見えなくなる病気じゃないかなって……」
「でも違いますよね? こんなに素晴らしい絵が描けるんですから」
ナキラとキッシュが交互に話し、レオが口を開きかけると。
「レオ様、これを……」
ジョシュアがイーゼルとキャンバスの間から封筒を取り出した。
封筒は三通あった。レオとニーナと使用人たちに宛てたものだった。
嫌な動悸が起こる。
レオはジョシュアから封筒を受け取ると、椅子に置かれたキャンバスをナキラに押し付け座る。
「……悪いがひとりにしてくれ」
声が震えた。喉もカラカラになってきていた。
.