この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
隠匿の令嬢
第20章 アリエッタの愛
レオは暫く封を開けるでもなく、ただ手の中にある封筒を見詰める。
開けたら最後。この世が終わってしまう気さえするのだ。
馬の上で揺られながら、繰り返しアリエッタの無事と居なくなった疑問が渦巻いていた。
それを紐解く鍵がこの中に詰まっている。確証に近かった。
封筒は糊付けされていない。手間をかけさせまいとするアリエッタの気遣いだ。だがそんな気遣いはいらない。
アリエッタさえ無事に戻ってきてくれれば、なにもいらないのに。
意を決して封筒から丁寧に折り畳まれた紙を取り出す。
薄くインクが滲んでいる。
早く読めと警鐘が鳴るのに、読みたくないと反発する警鐘も鳴る。
打ち勝ったのは読めと鳴ったほうだった。
微かに震える手で紙を開いた。
綴られている文字はアリエッタらしい几帳面で綺麗なもの。
レオは眉をひそめ、文字を追った。
.