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隠匿の令嬢
第21章 その世界、色鮮やかに




 アリエッタがザキファス邸より飛び出したのち、茫然自失のまま道なき道をひたすら歩いた。


 望んだ結果を得られたとはいえ、二度とレオやニーナたちや家族と逢えないのは予想以上に胸を抉った。


 レオと逢えないのが哀しいのか、父から愛されていなかったことが辛いのか。絆を取り戻せた母やリリスを裏切ってしまったことが痛いのか。


 思考はぐちゃぐちゃで、その夜は泣きながら歩き続けた。


 どこへ向かうでもなく、宛もなく。一念にあるのはメフィスから少しでも離れること。


 時おり川で喉を潤し、木の実をかじって飢えをしのぎ。


 足が棒のようになるまで歩いては、木陰で気絶するように眠り。


 目が醒めるとまた歩いた。


 三日も経つと、疲れからかどうして歩いているのかさえ解らなくなった。


 ドレスは汗と泥で汚れ、けれどそんなことは気にも留めなかった。







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