この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
隠匿の令嬢
第21章 その世界、色鮮やかに
アリエッタがザキファス邸より飛び出したのち、茫然自失のまま道なき道をひたすら歩いた。
望んだ結果を得られたとはいえ、二度とレオやニーナたちや家族と逢えないのは予想以上に胸を抉った。
レオと逢えないのが哀しいのか、父から愛されていなかったことが辛いのか。絆を取り戻せた母やリリスを裏切ってしまったことが痛いのか。
思考はぐちゃぐちゃで、その夜は泣きながら歩き続けた。
どこへ向かうでもなく、宛もなく。一念にあるのはメフィスから少しでも離れること。
時おり川で喉を潤し、木の実をかじって飢えをしのぎ。
足が棒のようになるまで歩いては、木陰で気絶するように眠り。
目が醒めるとまた歩いた。
三日も経つと、疲れからかどうして歩いているのかさえ解らなくなった。
ドレスは汗と泥で汚れ、けれどそんなことは気にも留めなかった。
.