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隠匿の令嬢
第21章 その世界、色鮮やかに
五日も経てば更に意識は混濁し、指を動かすのも億劫になった。
それでもアリエッタは歩くのを止めはしなかった。
疲れればなにも考えずに眠れ、心も身体も渇いていってしまっているからか、涙も出なくなる。
六日目には腹が減ったという感覚も失せてしまった。靴擦れで血が滲む足裏の痛みも麻痺してきた。
そうして七日目の朝。遂に力尽き、倒れていたのがコンスタンティン女子修道院の前だった。
水汲みに出掛けた修道女によって倒れているところを発見され、手厚く看護され。
修道院には様々な事情を抱えた女たちが身を寄せているらしく、しかしそれを問いたださないのがここの暗黙のルールであるのかアリエッタもなにか聞かれるでもなく受け入れられた。
偶然だったとはいえ、まさか修道院に身を寄せることになるとは、皮肉なものだ。
けれど定められている運命なのかと、アリエッタは修道院で働くことを願い出た。
幸運だったのは暴漢や野犬に襲われなかったこと。アリエッタは助かった命に感謝し、生涯神に仕えると決めたのだ。
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