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隠匿の令嬢
第21章 その世界、色鮮やかに




 暫し思惟が停止する。


「わた……し?」


 どうにか声は出せたが、信じられなかった。だってレオはリンゼイを好きなはず。


 彼女を見るレオは驚くほど優しげで、愛おしそうであった。


「信じられません……。あなたは王女様を……」


「それは誤解だ。だが誤解させる原因になったのは多分……王女がシンシアと瓜二つだったからだと思う」


「王女さまとシンシアさんが……?」


「俺も最初逢ったときは驚いた。他人のそら似とは思えないほど似ていた。年も同じだし、生きていたら彼女のようになっていただろうかと、重ねてしまっていた」


「じゃあ婚約したというのは……?」


「そんな事実はない。誓って言うが、俺が愛しているのはアリエッタだけだ」


 真摯なレオの眼差しには嘘はなかった。


 心が震える。レオが自分に愛を伝えてくれることに。


「俺はここに神でも神父でもシスターでもなく、アリエッタに赦しを乞いに来たんだ。キミを傷付けてきた俺を赦してくれるなら、俺のところに戻ってきてくれないか」


 レオの懇願に涙が出そうになる。





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