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隠匿の令嬢
第21章 その世界、色鮮やかに
レオはアリエッタの背に腕を回し、抱き寄せる。
「ああ、生涯離れないでくれ。もしまた逃げようとしても無駄だ。どこへでも探しに行くし、嫌がっても拐う」
耳に響く懇願に、胸が切なく震えた。
もう言ってもいいだろうか。言わないと誓いを立ててしまった言葉を。
「逃げないわ。だって……」
刹那、躊躇った。これまでを振り返り、互いの気持ちが擦れ違ったとはいえ、レオを知らずに傷付け苦しめてしまった。
半年間、レオはアリエッタ以上に苦しんできたはずだ。それを思うと罪悪感がもたげるも、こんな自分をレオは諦めず迎えに来てくれた。
だったら迷うことではない。これからは彼のよう、真っ直ぐレオを愛するひとりの女として言えばいい。
「あなたのこと愛してるから」
途端、抱き締めていた腕が緩み、丸くした瞳でまじまじ見詰められ、そして不機嫌そうに眉を顰める。
やはり言ってはいけなかったのだろうか、と息を呑めば。
「……キミはずるいな。そんな誘い文句を言われて、我慢出来るわけないだろ」
むっつりとするレオをよくよく見れば、温かい湯のせいとはまた別に頬が上気していた。
え? と疑問を投げる間もなくレオはアリエッタを抱き上げると、浴槽から出ようとした。
「湯にはもう充分浸かったな。これ以上我慢させられたら、頭がどうにかなりそうだ」
不遜に言い放ち、有無を言わさずアリエッタを寝台へ運んだ。
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