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隠匿の令嬢
第3章 肉食獣は紳士の仮面を被る
呆然と息を切らせ動けないアリエッタをレオはそっと胸に抱く。
「少しやり過ぎたな」
倦怠感で身体が重く、なにも考えられない。
なにをされ、なにが起こったか。
汗で貼りつく前髪をレオの指が掻き、額に労るような口づけをされるのにも抵抗出来ず。
そのあと乱れたドレスを丁寧に着せられるのもされるがまま。
立ち上がるのもままならないアリエッタをレオは寄宿舎まで横抱きで送ってくれたのも、どこか遠くで自分の姿を眺めてる感覚で。
寮母が大層驚いていたのも蚊帳の外で見ている気分。
冷たく固い質素なベッドに横たえられ、レオが「またな」と呟いて出ていくのもぼんやり眺めていた。
静かになった部屋に一人残されたアリエッタは枕に顔を埋めて震えた。
恐怖からなのか欲望に身を任せてしまった己の愚かさへの嫌悪なのか。はたまた別の感情なのか──。
けれどアリエッタは泣かなかった。
あれほど強く言い付けられ誓った約束を、これ以上破るわけにいかないから。
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