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隠匿の令嬢
第4章 巣を追われた灰ネズミ



 アリエッタが温室へ足を運ばなくなってから一週間が過ぎていた。


 あんなことがあり、どういう顔で逢えばいいか解らないというのもあるが、求められるがまま受け入れてしまっていた自分が赦せなかった。


 けれど行かなくてはならない。


 肖像画のモデルを頼んだということもあるし、温室の花を描かなくてもならない。


 最大の理由はあの日の翌日届いたレオからの贈り物。




 レオは手紙を添えてアリエッタの寝泊まりしている寄宿舎に画材を一式贈ってくれたのだ。


 真新しい上質の豚毛の筆に油絵の具を一通り、キャンバスやスケッチブックを数冊、水彩画用の絵の具や筆まであった。


 そして手紙には、やり過ぎてしまった詫びとして画材を受け取って欲しいと綴ってあり、赦してくれるならまた逢って欲しいと締められていた。


 アリエッタが温室へ行かなければレオはずっと罪悪に苛まれているかもしれない。直接逢って、怒っているわけではないと伝えねばならない。


 画材も有り難いが受け取れないとも言わなければならないのに、どうしても行くことが出来なかった。





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