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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第7章 波乱の幕開け
彼が顔をあげる。泣いていたからだろう。目が赤くなっていた。私の服をこんなに濡らして泣くってー・・クールなのか子供っぽいのかますます掴めない。
彼の前髪をあげて、どちらからともなくキスをしようとした時ーー・・ぐっすり眠っていたはずの紫音が泣きわめいた。
「あーミルクかな。」
「え?なんであんたわかんの?」
小百合って呼ぶのは、本当に貴重なのね。すっかりと元の態度に戻った柳沢が可愛らしいけど憎らしい。
「妹と一回り離れてるし、従兄弟とも10以上離れてたから。子供の事は分かってるつもり」
指を紫音の口に持っていく。
「あ、本当だ・・。口すげーパクパクしてる。腹減ってるんだな。」
「ミルク作ってくる。」
「あーちょっとまって。これ哺乳瓶。消毒しろよ?!で、これがミルク。」
「はいはい。」
「あんた、まじで熱湯消毒・・「わかってる。」
こいつーー・・絶対過保護になるだろうな。
自分の娘が産まれた時なんて、やばいだろう。
響にも劣らないくらいの酒癖を発揮しそうだな
って想像して、ちょっと笑ってしまう。
「ほら、紫音。泣くな」
とか言いながら、抱き上げる気配は無い。
ーー・・なんだそれ。
急いで、お湯を沸かして、哺乳瓶を消毒し、ミルクを作った。手首に少しだけミルクを垂らして、温度を確かめてから紫音を抱き上げる。
「紫音。ご飯。」
どっちに似てるのかな?赤ちゃんなのに珍しいくらい大きな瞳で私を捉えると、弾力のある手で哺乳瓶を無意識に掴みながらミルクを飲むーー・・。
そんなに甲高い声で泣かないし
泣き声も小さい。逆に夜泣きに気付かなかったりしたらどうしよう。柳沢も究極に寝起き悪いしーー・・・・。
心なしか柳沢に似ている
綺麗な顔の赤ん坊は、私の腕の中で幸せそうに目を閉じる。
「寝た?」
「寝かけ。」
自然に私の顔に笑顔が溢れる。これが赤ちゃんのパワーなんだろうな。
「ミュラーいるでしょ?」
「サインの?」
「そう。あの子、マークスの子供なんだけど、すごく悪いの。やんちゃ。」
「こいつもいずれはそうなるよ。だんご虫とか持って帰ってくるようになる。」
「それは柳沢の仕事。私はみてみぬフリするから」
「ふっー・・何だよ、それ」
紫音がミュラーみたいになるのを想像して、私たちは同時に笑った。