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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第12章 前夜祭
流暢なスピーチを舞台裏のテレビでぐっすり眠っている紫音と見ていた。グレーのスーツは本当に良く似合っていて、先ほどまでの怒りを表す事なく、綺麗な顔そのままだ。私にだけ、あんな姿を見せるのか?
信頼されてるのか
なめられてるのかー・・どっちだろう。
どっちもだったら、怒るに怒れない。
ここがきっと私の性格の弱いとされる一面だ。
「えー、イギリス戦。」
「俺にとっても、皆様にとっても絶対負けられない試合です。一人は皆の為に、皆はサポーターの為に。」
とても美しい言葉で10分少しのスピーチに花を飾ってから、手を振りながら裏に戻ってきた。
「お疲れさま。」
「緊張したー」
「えぇ?!なんで?」
「だっていろんな人居るし。
スポンサー関係の人も居るから下手うてねぇよ」
「確かにそれはそうやね。お疲れさま。
よかったよ。」
「知ってる。」
「はぁー・・ほんまに光は。」
「何だよ。」
「何もない!」
「・・。まぁ、あんたもお疲れさま。
ごめんな、こんな所付き合わせて。
女が絡んだら面倒臭い事になるから、
あんた居て助かったよ。ありがとう。」
「あら、毒抜けたんじゃない?」
「何ヌカしてんだよ、ばーか」
遥くんに言われた言葉をそのまま光に返して、
二人で笑った。
長い長いパーティーも終わりの鐘をならしている。
ーー・・機嫌が治っているのかはまだわからない。
でも、彼の笑顔を見れたら、私の怒りはどこかに吹き飛ぶ。これが家族のパワー。
私達家族は、軽く皆にさようならの挨拶を言ってから会場を後にした。
輝く月は、私へ返事の催促をしている様だったー・・。