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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第13章 合縁奇縁
「光は?」
「奥の部屋に居ます。
救急車を呼んだんですが、どうも・・・」
「何だよ!?」
「出待ちのファンの人の多さと
事故で道路が混雑しているのもありましてー・・。
まだ此処に到着できてないんです」
「はぁ?救急車が必要なほどの怪我なのかよ?」
「そうですね。保険医から聞いただけなので私も詳細を聞かされてはいませんがー・・」
遥くんや響にとっても
光は大きな存在であり、そして大事な友達でもある。
予想以上の、怪我の具合に
ちょっと戸惑っているように見える。
響の仮面が剥がれてきているのが、私にそう思わせたんだ。
「俺も中に入れろ!」
「ダメだよ、響。仕事がある」
「だけどーー・・っ」
「自分のことよりも、仕事を優先しなきゃいけない職業を選んで、この道で生きていく決心をしたのは俺達自身だろう。光のことは小百合に任せれば良い。
大丈夫だよ、命に別状があるわけじゃない。」
「喋ろうと思ったら喋れるし
会おうと思ったら会える。
ただ、腰の怪我がひどいだけだ。」
「だけってー・・おめぇなぁ!」
「そう思わないと心配すぎて仕事に手がつかなくなる。
しっかりしろよ、紫音も居るんだ。
お前が怒ってコイツに怖い思いさせるな」
遥くんはー・・誰よりも冷静だった。
いつものポーカーフェイスは溶けることなく、存在している。
だけど彼の言葉に救われたのは確か。
そうだよー・・命に別状があるわけでも無いんだよ。
こんなに焦る必要もー・・うん、きっと無いんだ。
「小百合、中入って来い。」
「紫音ー・・。」
「5分だ。5分で出ておいで。
それまでは俺達が見とくから。」
「遥くんーっ」
「すみません、今他の人を入れるのは」
「コイツは、光の嫁だよ。俺がそう言うんだから間違いないだろう」
“えぇ!?”と大きな声があがる。
響とー・・警備員さんと、サッカー関係者の人のものだ。
「え!?あの!?」
「早く入れてあげて。大事な話しなきゃならないみたいだから」
「ーー・・・・・・分かりました。
此方へどうぞ」
心強い彼の笑みを、背中に、私は光の元へ向かった。