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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第15章 命の重み
"千代菊ちゃん、おめでとう"と書かれたカードを鞄にしまいこんで、私はこの子を抱き、病院を後にした。
しばらく見ていなかった、厳つい白色のベンツが、それはまぁ偉そうに入り口に停められてある。輩同然の駐車の仕方にあきれそうだった。
今日、紫音と光は、またイギリスに帰ってしまう。紫音を連れていくのは、私の体調を心配してくれてるから・・?泣きながらママと離れたくないと言われたら、置いていって良いよ!と言いたかったけど、現実的に考えて一歳五ヶ月の子と生後一週間の子をパパの助けもなく育てるのは少し無理そうだから、言えなかった。
「寝てんのか?」
「うん。・・あら、チャイルドシート増えてるやん。」
「あぁ。必要な場面出てくるだろ。
子供二人もいたら。」
「そうやね。紫音~。また飛行機いいねぇ」
「ママー!」
「はいはい。お家帰ったら抱っこしようね。」
左に位置するハンドルを握ってサングラスを少し上げた光は二人の父親になった。
ーー・・子供が居そうには見えない。
遊んでいそうに見える、それが彼の雰囲気。
だけど確実に優しくなったのよ。
大切な人のために怒って、泣いて、
時に優しい言葉をかけてくれる様になったー・・。
時の流れは無情で、
人間を男から父親にしてしまう、あっという間に。
でも、毒のない貴方の方が好きよ。
柳沢光ー・・。