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浮気断定社
第10章 依頼人 高橋 美樹
「いけ!いけ!いけ!
 あー!!!何失速してんだよ!!!」

競馬場の歓声と怒号の中
洋輔の言葉もその渦に吸い込まれていた。

「くっそ!!」

馬券が紙吹雪となり雪のように宙を舞う。

最終レースが終わり駅に向かう人波に洋輔もまた紛れていた。
駅前のそこここの居酒屋に世の中から取り残された男たちが安酒を片手にひとときの鬱憤を晴らす。

「くそっ サイテーの日だな」

洋輔は冷や酒の入ったコップを握りしめた。

「にーちゃんもやられた口かい?」

酒焼けした浅黒い男が洋輔に声をかける。

「うるせーよ」

洋輔は男に背を向ける。
酔っている男はしつこく絡んでくる。

「にーちゃんそうカッカすんなよ。
 馬だって気分があらーな」

男が洋輔の肩に手をかけた。
洋輔はどうしようもなくイラついていた。
別に馬のせいでもましてやこの男のせいでもなかったが...

バキッと頬に一発入れてしまった。

男が吹っ飛ぶ。

「テメェ なにしやがる」

男はふらつく足で立ち上がった。

店内は騒然とする。

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