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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第1章 始まりの夜
 サヨンは小さな息を吐き、声の主に向き直った。
「―泣いていたのですか?」
 トンジュは月明かりに冴え冴えときらめく涙の滴(しずく)にめざとく気づいたようだ。
「気にしないで」
 サヨンは微笑み、小さく首を振る。
「何がお嬢さまをそこまで哀しませるのでしょう?」
 トンジュは控えめな口調で訊く。
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