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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第1章 始まりの夜
しかし、この美しさは、どこか奇妙な感情を呼び起こした。言葉ではなかなか言い表せないけれど、しきりに胸の奥がざわめいているような。仮にこの世に存在するあらゆる言葉の中でたとえるとするならば、胸騒ぎとでもいえようか。
とにかく、不吉なほどに美しい月であった。
沙纓(サヨン)は唇をキュッと噛みしめながら、その明るすぎるほど明るい月を眺めていた。
ふいに感情が一挙にこみ上げてきて、サヨンは滲んできた涙をまたたきで散らす。