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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第3章 幻の村
 トンジュの眼に不穏な光が閃いた。
 サヨンは膝の上で握りしめた両手に思いつめたように眼を落とした。
 夜の静寂だけがただ際立っていく。遠くでホロホロとミミズクが侘びしげに啼いていた。
 サヨンは思い切ったように顔を上げ、ひと息に言った。
「私のたった一つの特技は刺繍なの。まあ、漢陽にいた頃は、趣味でしかやったことはないんだけれど、これを何とか仕事に活かせないかと考えているのよ」
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