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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第5章 彷徨(さまよ)う二つの心
 とにかく一刻も早く逃げなければ。
 サヨンは足音を忍ばせて部屋を横切り、両開きの扉を開けた。外は薄陽が差し込んでおり、大方は昼前であろうと推察できた。
 山の上は一日中、どんよりと曇っているが、トンジュが言っていたように真昼間のほんの数時間だけ、薄陽が差す時間帯があるのだ。
 サヨンはもう一度、背後を振り返る。大丈夫、男はまだよく眠っている。あの様子では、まだしばらくは目を覚まさない。その間に、できるだけ遠くまで逃げるのだ。
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