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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第5章 彷徨(さまよ)う二つの心
サヨンは素裸のまま立ち上がった。確か厨房に肉切り包丁があったはずだ。あれを使えば良い。思い立つとすぐに厨房まで走り、包丁を取ってきた。
これで良い。これを喉に突き立てれば、もうすぐ、すべてが終わる。サヨンはこの世のあらゆる柵から解き放たれ、トンジュに捕らえられることもない。
永遠にあの男が追いかけてこられない場所にゆくのだ。サヨンは眼を閉じた。心の中で一から三まで数えて、四で事に及ぼうと決めた。