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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第5章 彷徨(さまよ)う二つの心
三月下旬、サヨンは一人で山を下りた。トンジュが怪我をしたからだ。森に出て狩りをしている真っ最中に猪に襲われたのだ。トンジュが森に出かけるのは毎日のことゆえ、特に心配はしていなかったら、夕刻、血まみれになって帰ってきたトンジュを見たときは心臓が止まるかと思った。
何しろ、扉を開けたときの彼ときたら、着ているパジが胸から腹部にかけて鮮血に染まっていた。サヨンが生きた心地もしなかったのも無理はない。