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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第5章 彷徨(さまよ)う二つの心
更にそれから幾ばくかの刻を経た頃になって外側から厳重にかけてある鍵が開く音が聞こえてきたかと思うと、今度は先刻の女中が再び顔を覗かせた。
「おや、何も食べてないじゃないかい」
女中は大袈裟に愕いた。
「それにしても、うちの若(トル)さま(ニム)にも困ったものだよねえ。女好きだといったって、人間なんだから、節操ってものくらい持ち合わせてると思うのに、どうやら、奥さまのお腹から出てくるときに、それをどこかに落っことしてきちまったみたいだ」
「おや、何も食べてないじゃないかい」
女中は大袈裟に愕いた。
「それにしても、うちの若(トル)さま(ニム)にも困ったものだよねえ。女好きだといったって、人間なんだから、節操ってものくらい持ち合わせてると思うのに、どうやら、奥さまのお腹から出てくるときに、それをどこかに落っことしてきちまったみたいだ」