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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第5章 彷徨(さまよ)う二つの心
闇に沈む庭を一人で走りながら、サヨンは二ヶ月前にも似たような経験をしたのを思い出していた。コ氏の屋敷から脱出したときも、こうして庭を走った―。でも、あの夜は満月も出ていたし、何よりトンジュがついていてくれた。
トンジュ、トンジュ、サヨンは心の中で呼びかけた。トンジュと手に手を取って都を出てから、もう何年も経ったような気がする。自分を攫うように連れ出した男を一時は烈しく憎み、拒絶した。だが、彼はいつしかサヨンにとって大切な男になっていた。
トンジュ、トンジュ、サヨンは心の中で呼びかけた。トンジュと手に手を取って都を出てから、もう何年も経ったような気がする。自分を攫うように連れ出した男を一時は烈しく憎み、拒絶した。だが、彼はいつしかサヨンにとって大切な男になっていた。