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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第6章 運命を賭ける瞬間(とき)
トンジュがサヨンを痛いくらいに抱きしめ、豊かな黒髪に顎を押し当てた。しばらくサヨンは愛しい男の腕に身を委ねていたが、やがて、そっと離れた。
「トンジュ、大切な話があるの、聞いて」
サヨンはそれから攫われて監禁された沈家の屋敷で聞いた例の密談について話した。
「そいつはまた穏やかではないな。つまり、義承大君が田舎住まいをしたがったのは風流とやらのためではなく、王さまの眼をごまかすためだったんだな」