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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第2章 蓮野に降る雪
女将はますます渋面になった。
「あんた、まさか本当にご主人さまのお嬢さんを攫ってきたのかえ?」
女将が殆ど悲鳴のような声で叫んだ。
「そうだと言ったら、どうするんだ?」
トンジュがふて腐れて言い返す。
「馬鹿なことはお止め。今なら、まだ間に合う。このお嬢さまを連れてお屋敷に帰るんだ。いや、お前が行くのは近くまでで良い。お嬢さんが無事に門に入ったのを見届けたら、お前はそっと誰にも判らないように引き返すんだよ」