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不器用なくちびる
第20章 【椎名 16才】
言葉を交わした訳じゃないけど
自然と2人はリビングに行き
向かい合って座った。


「今の…いつもやってるの?」


「そうだな…気付いた時はな。
お前も気付いたらやってやれるか?
椎名もお前の手の方がいいだろう。」


私は椎名の妹の美優ちゃんの
話を初めて聞いた。
そしてお父さんが、その時
○○モールに居合わせて
いなくなった美優ちゃんを探した
大人の中の一人だったことも…

次の日から私は、椎名の声が聞こえると
手を握ってあげるようにした。
椎名はほぼ毎日うなされていたし
いつも座って眠っていた。

そして朝は元気に叩き起こして
必ず一緒に朝食を食べる。

それは、椎名の家庭環境の話も
聞いたからだ。

お父さんは事件以来
椎名のことが気になっていたらしく
いろいろと詳しかったけど…
椎名にはまだそのことを
言っていないらしかった。
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