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不器用なくちびる
第20章 【椎名 16才】
「ごめんなさい…!
私、酷いこと言った…
椎名が好きだから…だから悲しくて。
でも、女の子をあんな風に扱うのは
良くないって気持ちは変わらないよ?
椎名だってわかってるんでしょう?

もうそんなに自分を虐めないで…
私が…私を…見てくれたら
絶対に幸せにしてあげるから…!」


桧奈の言葉を聞いて
俺が感じたのは喜びと恐怖だった。

喜び…
幸せにしてあげる、
なんて初めて言われた。
お前、女だろ?
でも俺は何でこんなに嬉しいんだ?
なぜだか桧奈が愛しくてたまらない。

そして恐怖…
俺は好きな女は抱けないんだ。
香山を傷付けたあの日々から
以前より酷く、毎日のように
夢でうなされるようになっている。
だからそれが治る気配なんて無い…
もう好きだなんて言わないでくれ…

こいつに嘘は通用しない。

俺は美優のこと
そして香山とのことを話そうと決めた。
この椅子に座っている間は
素直になれそうな気がしていたから…
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