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不器用なくちびる
第20章 【椎名 16才】
そして今日俺は、
橘の姉ちゃんの講演会に
娘の美優希を連れて行くつもりだ。
まだ小さいから中には入らずに
募金だけして来よう。

橘の姉ちゃんの活動を知った時
俺はおやじさんに対してだけ
抱いていたのと同じ気持ちを持った。

俺は周りの大人のことを恨んで、
全て大人のせいにして生きてきたけど…
こんなに尊敬できる大人もいる。

俺は橘の姉ちゃんが
どんな目にあったか知ってたし、
ヤッた方の奴らなんか知り合いで…
しかもそのことで橘を脅したりして
愉しんでいたクソ野郎だ。

でも、そんな俺でも
いつかは2人みたいな大人になりたい。
いや、ならなくちゃいけない。
美優希のために…桧奈のために…

まずは一人前の
椅子職人にならないとな。
俺もおやじさんと一緒に
無償で椅子を作り始めたけど…
まだまだだ。


「さぁ、美優希、お出かけだぞ~?
パパとブーブ乗ろうね?」


香山…お前は今どこで何してる?
幸せに笑ってるか?
それを知る権利すら俺には無いけど…
せめて祈らせてくれな?


✳︎椎名 16才 完✳︎
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