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裸の女神
第6章 岬エリカ
「光と影ね」
私は泣きながらポツリと言う。

「影を知らなきゃ、
光の眩しさや輝きも分からないだろ?
光が当たってみて、
やっと光の有り難みが分かる」

「そうね‥‥‥」

「休んでもいいんだぞ?
休んで元気になって、
光が恋しくなるまで、
自分を可愛がってやれ」

「怖いわ。
休んでしまったら、
その場所が永遠になくなって、
二度と光が当たらなくなったら‥‥‥」

「なぁ、
エリカ。
本物のファンって、
どんな人だか想像出来る?」

「えっ?
想像つかないわ」

「そうだね。
形だけのファンは離れる。
物珍しくまた違うアイドルや
夢中になれる人を探す。

でも、本物は決して離れて行ったりしない。

俺さ、
学生の頃から大好きな女優が居るんだ。

池波麗子。
エリカも名前は知ってんだろ?」

「うん」

「今はさ、
ドラマではいいお母さんだったり、
どうしょもない女で、
犯罪者の役だったりな。

あの人、
どんな女性にもなるんだ。
演技で魅せる女優なんだな。

最初から池波麗子がそうだったか?
っていえば違うと思うんだ。

思春期真っ盛りだった俺がさ、
あの人が映画で突然脱いで、
ポロンって現れたオッパイを見た時は、
興奮したよ。

いやー綺麗だった!

相手役の俳優にしがみついて、
抱き合ったりしているのを見て、
嫉妬したりな。

それでも、
あの人の裸が目から離れなくなった。

それからかな、
あの人が出る映画やドラマは必ず見た。
でも脱いだのはたった一度だけ。
ラブシーンやベッドシーンがあっても、
ヌードになる事はなかったな。
幻のオッパイだった。

どんどん演技派女優になる彼女が、
輝いて見えた。

今のエリカに重なるね。

そもそも俺がマネージャーになった原点は、
何処かで池波麗子に会えるんじゃないか?
って憧れからだからな。

人生まで決めるほど、
俺みたいな熱烈なファンも稀に居るんだよ。
自分の事のように、
その人が気になって、
ずっと好きで応援が出来る。
本物のファンって、
そんなもんじゃない?

人間は疲れたら、
休むんだ。
休んでいいんだ」
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