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その、透明な鎖を
第1章 そこにいたのは
「なに黙ってるの?」
凛が、悠斗を覗き込むようにする。
長い黒髪がさらりと揺れて。
……揺れて。
「悠斗?」
「え?」
その声に、彼ははっと我に返って彼女から目を逸らす。
見とれてしまっていた。
そう自覚したら、急に顔が熱くなって。
「ね、悠斗」
「ん?」
目を逸らしたまま、声だけを返す。
「悠斗はいくつ?」
「俺? 17」
「3年生?」
「いや、2年」
「そうなの? じゃあ一緒だね」
その言葉に思わず彼女を見る。
「凛も、なんだ」
呟きが、漏れて。
「あ」
彼女が、嬉しそうに笑った。
「名前で呼んでくれた」
「え」
「私のこと、凛、って」
「だって、そっちも俺のこと」
「うん」
凛が、少し近付いてきて。
「自分の名前、好きだから。うれしい」
首を傾げて、悠斗を見上げる。