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その、透明な鎖を
第1章  そこにいたのは


――動悸が。


「……っ」


なんだか胸が苦しくなって、隣から目を逸らした悠斗はそのまま少し彼女から離れた。


「……それ、どこの制服?」

 
そして、ちら、と彼女を見て。


「これ?」


彼女はスカートの裾を両手で摘まむ。


「可愛いでしょ?」

 
そのままくるっ、と回って。
その裾がふわりと。

……ふわり、と広がったのは裾だけじゃなくて。


「あ」


いい香りがする、と。
彼は思わず凛の方に顔を寄せた。


「悠斗」


彼女のその、言葉と。
袖を、掴まれた気配と。


――え。


いつのまにかすごく近付いてきていた凛に驚く。


「悠斗って、いいにおいがするね」


凛は目を閉じて彼に顔を寄せ、すうっと鼻から息を吸って。


「それは……そっちの方だよ」

「そっち?」


悠斗の言葉に、凛の目が開かれる。
彼をまっすぐに見る――その大きな瞳。


「……っと、凛の方だよ」


慌てて言い直すと、ふふっと微笑まれた。


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