この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
その、透明な鎖を
第8章 認めたく、なかったのに
――え?
思わず、彼は彼女を見て。
その口元に微かに浮かぶ、哀しそうな微笑みを、見て。
「凛――……」
その名前しか、言えなくて。
「それから写真、撮らなくなったの」
そう言って、彼女はそっとページをめくる。
何も貼られていない、真っ白なページ。
そこを、手のひらで撫でて。
思わず、彼はその手に自分の手を重ねた。
「ごめん」
――まさか、そんな理由だったなんて。
「ごめん、凛」
その手を彼はぎゅっ……と、握って。
黙って下を向いたまま、首を振る彼女を見て。
「もう、2年近く前のことだから」
「……じゃあ、中三のときに?」
「うん。9月」
「そう、だったんだ」
彼は呟いて。
――そして、それに、気づいた。