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その、透明な鎖を
第8章  認めたく、なかったのに


「凛に、会いたくて」


ぽつり、と。
彼も彼女を見つめながら。


「会いたくて、我慢できなくて。だから、寄ったんだ」


小さく息を吐いて、続ける。


「そしたら、声、聞こえて。
……最初、悲鳴かと思って。何かあったのかと思って焦って。その声、よく聞いてみたんだ」


冷静なまま、話す悠斗。
それに、自分でも少し驚きながらも。


「そしたら、それ、悲鳴じゃなくて。やってる最中の声だって分かって。そんで、お互い名前呼び合ってて」

「悠斗……やめて」


凛は、思わず彼の名を呟いて。
そして、彼から目を逸らした。


「龍、って。桜、って。お互い呼び合ってて。
俺、てっきり凛の両親がやってるんだって思ってたけど」

「やめてよ……」


凛は、とうとう両手で頭を抱えるようにして。
それでも、悠斗は話すのをやめなかった。


「さっき凛から、お母さんは亡くなった、って聞いたから。
じゃああれは……桜って呼ばれてた、お父さんの相手は――――」

「……っ、やめてってば!」


強い口調で、彼の言葉を切る彼女。


「お願いだから……」


そしてそう、続けて。



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