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その、透明な鎖を
第10章 私が失ったもの
どうしよう。
――どうしよう。
なかったことになんて、きっとできない。
このまま平気な顔をして、今までのようにパパと接するなんてことできるんだろうか。
「――っ、パパ!」
こわくて。
たまらなくなって。
とうとう私はパパにしがみついた。
パパも、私を強く抱き締め返す。
「ごめん! ごめんな、凛っ……」
私は、幼い子供のように声を上げて泣きじゃくった。
「オレが悪いんだ、凛を不安にさせたオレが全部、全部……っ……」
凛は悪くない、と。
私の頭を撫でながら。
「絶対、凛をひとりになんてしないから。約束するから――……」
私は、さらに強くパパにしがみついた。
身体の奥に感じる違和感と、リアルな痛み。
頭と心を微かながらも確かに刺激してくるのは、たぶん、そう……それは、罪悪感と自己嫌悪――――。