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その、透明な鎖を
第11章 私と、そのひと
あれから、パパは私になるべく普通に接するように気をつけているのがわかる。
同様に、私もそうしているのがパパには伝わっているだろう。
……けれど、それでも明らかに私たちはぎこちなかった。
必要なことしか話さなくなったし、話すときも、目を合わせてということが、少なくなった。
普通が。こんなに難しいとは思わなかった。
そう感じてしまうほど、本当はふたりとも、互いに普通に接することなんて、全くできてなどいなかったのだ。
一線を越えてしまったのに、違う意味での線が新たに引かれた、微妙な関係。
ぎこちなくて、一緒に同じ部屋で過ごすときの空気が、とても重い。
笑っていても、どこか無理矢理な雰囲気すら漂う。
次第に、私は自分の部屋でひとり過ごすことが多くなっていった――――。