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その、透明な鎖を
第11章 私と、そのひと
あのときから、半月以上経っていた。
いつもの、会話なんて弾まない夕食。
テレビの音だけが虚しく響いて。
私は食欲がなく、早々にそれを切り上げる。
心配するパパに、大丈夫と一言。
そして部屋に籠もってしまっていた。
しばらくして、パパがドアをノックする音。
躊躇いがちに名前を呼ぶ、その声。
「……凛、開けるよ」
静かに開かれたドアから、気まずそうなパパが現れる。
――わかっている。
ママを亡くして精神的につらい状態のパパに、私のことでまで悩ませてはいけないんだってこと、よくわかっている。
あのときのことは、酔って私をママと間違えたパパも。
それを受け入れようと煽ってしまった私も。
どちらも悪かったんだ、と。
だから忘れよう、と。
そんなふうに話したはずで。
けれど、頭ではわかっていても。
父親の男の部分を知ってしまって、それをなかったことにして、仲のいい親子の関係に戻るのがどれだけ難しいか――時が経つにつれ、苦しいほど実感している。
それはたぶん、パパも。
酔っていてほとんど覚えていないようではあるけれど、それでもやっぱりいつものパパとは違う。
……すべてを覚えている分、私の方の態度がよりぎこちないのはどうしようもなかったけれど。