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その、透明な鎖を
第13章 私が出逢った、彼
なんだろう。
なんだか、すごく、おもしろい。
久しぶりに着た制服で気分が高揚していたせいなのか、私は、よくわからないこの人との他愛のない会話が楽しくなってきてしまった。
龍以外の人と話すのは、久しぶりで。
楽しく思いながらも少し緊張している自分がいる。
それはなんだか、不思議な感覚だった。
でも彼は、急いでるから、と言って歩き出そうとする。
え……。
楽しかったのに。
もう、終わり?
もう少し、話してみたいと思ったのに――――。
そんな思いが、口をついて出た。
彼を呼び止めて。
明日も来て、と言ってしまった。
彼は、あさってならここを通ると答えた。
「待ってていい?」
自分の口から出た言葉に、自分で少し驚いて。
動揺を隠そうと、水遊びに夢中な振りをしながら、ばいばいと手を振った。
やがて歩き出した彼の後ろ姿を見ながら。
あさって……来てくれるといいな、と。
少しだけ、期待している自分に気付く。
――それが、悠斗と私の出逢いだった。