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その、透明な鎖を
第14章 泣きたくなる
……蝉の、声がする。
『そうして、私は悠斗と出逢ったの』
その言葉を最後に黙り込んだ凛。
それで悠斗は、彼女の告白は終わったのだと分かった。
訪れた静寂を打ち破るかのように、蝉の声が聞こえてきて。
……いつから鳴いていたんだろう、と。
そう思った悠斗の額から滲み出た汗が、頬を伝って落ちた。
――暑い。
ちらり、と凛を見る。
彼女は汗ひとつかいていない様子で、話疲れたかのように、今はもうただ俯いているだけで。
――どうしてこんなに暑いんだろう。
蝉が、うるさいから。
だからよけいにそう感じるのだろうか。
彼はそんなふうに思いながら、さっき凛から渡されたタオルで顔を覆うようにする。
そのまま、俯いて。
――凛……。
ただ、彼女を想った。