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その、透明な鎖を
第16章  記憶の奥底


そして、すべてを知った自分が、これからは凛を支えていければと思った。

龍のために母親の代わりになることが存在理由だと言った彼女に、身代わりなどではなく、自分のために、凛自身がそこに存在していて欲しいと思った。
龍のためではなく、もう彼女自身のために生きてほしくて。

だって、彼女は自分を好きなのだから。
そして自分も、彼女を好きなのだから。

身代わりとしての凛じゃなく。
凛自身を必要としている自分がそばにいるのだから。

それが、悠斗には一番自然なことのように思えたのだ。


だから、彼女に言った。
『もう、充分なんじゃないか』と――――。


それは暗に、龍との関係を示唆していた。
彼に、母親の身代わりとして身体を差し出すような行為は、もう終わらせてもいいのではないかと。
もう、充分なのではないかと。

あのとき、凛は何も答えはしなかったけれど。
自分の思いは伝わっていると、そう思っていたのに。


それは、自分のただの思い込みだったんだろうか――そう、悠斗はうなだれて。


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