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その、透明な鎖を
第16章  記憶の奥底


あの紅い痕。
たったひとつのその小さな痕は、あまりにも生々しいふたりのすべてを悠斗に想像させた。

無理矢理に記憶の奥底に沈めていたあの日のあの声――――。
今し方聞いたばかりのように、容易に思い出せてしまった。


『龍』


甘く、彼の名を呼ぶ凛の声。


『桜』


応えるように低く響く、龍の声。

悲鳴にも似た、あまりにも艶めかしすぎる、彼女の喘ぎ声。


そして。
あの、キスマーク――……。


悠斗の頭の中が、勝手に想像を始める。


彼女の大きく開かせた足の間に顔を埋め、そこに口づけて吸い上げる彼の姿。
さっき、自分がしたようなことを、彼も、彼女にしている。

彼女が、その快楽を激しく訴えるほど、その身体を愛している彼。
それに、さっき自分の前で見せたようなたまらなく色っぽい顔をして悶え、喘いで、応えている彼女。

抱き合って、口づけて、互いにその舌を絡めて。


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