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その、透明な鎖を
第16章 記憶の奥底
「……凛」
悠斗は、彼女に視線を送る。
あどけないその寝顔は、間違いなくただの普通の女の子だ。
望まないセックスなんて、きっと苦痛以外の何物でもない。
そんな思い、もう彼女にさせたくない――――そう、彼は決意を固める。
「……待ってて、凛」
――俺が、助けてあげるから。
彼は、彼女の顔の横に無造作に投げ出されているその柔らかな手をそっと握る。
彼女が目を覚ます気配はない。それほどまでの深い眠り。
彼はそのまま、そっと彼女のそばに横たわる。
背中にぴったりと背後からくっつくようにして。
そうして、ぎゅっと。彼女の身体を抱き締める。
「ん……」
少し、彼女が反応を示した。
けれどすぐにまた、その寝息は落ち着いたものへとなっていく。
彼はその頭をそっと撫で、その髪に顔を埋める。
――待ってて。
心の中でそう呟く。
大好きな彼女を、この手で救いたい。
ただそれだけを思い、やがて彼は静かに目を閉じた……。