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その、透明な鎖を
第22章 夏の名残
……落ちていた、蝉の抜け殻。
足を止めて拾い上げると、過ぎ去っていく季節の寂しさが自分の感情と重なった。
――残されたのは、記憶という形だけ……。
突然、鼻の奥が、つうんとして。
その感情に飲み込まれまいと、悠斗は唇を強く噛む。
――違う。思い出になんかできない。
そんなふうに、凛のこと……したくない――――!
彼はそう思いながら、再び歩き始める。
道の先のゆるいカーブ。
そこを曲がると見えてくるその場所で、あの頃、いつも凛は彼を待っていた。
黒髪をさらりと風に揺らして。
すらりとした、綺麗な立ち姿で。
彼を視界に認めると、近づいてくるその姿を見つめながら。
――そうやって、いつも凛は俺を待っていたんだ。