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その、透明な鎖を
第22章 夏の名残
悠斗は学校のあと、無意識のうちにそこへと向かっていた。
あの頃を思い、当たり前のようにその道を歩きながら、彼は思い出していた。
彼女と初めて会ったあのときを。
制服姿で、川に入って。
楽しそうにはしゃいでいた凛。
『何してんの』
『水遊び』
ふっ、とその口元が歪む。
――ほんと、変な女だったよな。
まさか、これほどまでに彼女に夢中になるなんて、悠斗は思わなくて。
凛と出逢い、知ったこと。
それは、あまりにも多すぎる。
好きという気持ち。
愛しくてたまらなくなって。
その手を離したくなくて。
欲望と、快楽。
満たされない苦しさも。
満たされる幸せも。
どちらも。
希望も、絶望も。
……後悔も。
ありとあらゆる感情の何もかもを、彼女と出逢ってから経験した。
ただ、それまでのように毎日をすごしていたらきっと味わうことなどなかっただろう。