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その、透明な鎖を
第23章 その、透明な鎖を
――やがて、悠斗は凛の身体を静かに解放した。
「……苦しいよ、悠斗」
凛が困ったような顔をして呟いて。
だって、と答えた彼に、あのいつもの表情を向ける。
「留守にしてて、ごめんね」
「……もう会えないのかと思った」
「向こう、帰ってたの。ママの三回忌で」
「あ……」
そういえば亡くなったのは9月だったと、以前凛は言っていた。
「もっと早く戻ってくる予定だったんだけど、おばあちゃんたちから引き止められちゃって。
で、今日のお昼前にね、帰ってきたの」
「そう、なんだ」
――そのとき、突然強く吹いた風。
凛の黒髪を跳ね上げるように攫っていって。
彼女は手で髪を押さえた。
そのまましばらく黙って、乱れた髪を直すように触って。
彼もその様子を黙ったまま、見つめて。