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その、透明な鎖を
第3章 いいこと
凛は、悠斗の身体を押すようにして起きあがった。
乱れた髪を少し手で直して。
そっと、彼を見る。
「……悠斗も」
そう、促して。
「――っ、でも」
彼は、下を向いた。
先に進む前に一度止められたことで、それに気づいたのだ。
「俺、何も……準備してない」
その、力のない呟き。
まさかこんなことになるなんて思ってなかったし、と彼は思いながら。
「……ん」
けれど凛は、悠斗のシャツに手を伸ばしてきた。
そのまま、ボタンを外していく。
「ちょっと……凛、聞こえなかった?」
彼は少し慌て、その手を止める。
「聞こえたよ?」
「だったら」
「あるから。大丈夫だから」
「……え?」
「親の。さっき持ってきたの」
彼女は彼のシャツから手を離して。
スカートのポケットを探り、それを取り出す。
「凛……」
「ひいた?」
悠斗は、激しく首を振る。
「……よかった」
ほっとしたように、そう、凛は息を吐いて。