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姫はひそやかに咲き乱れる~戦国恋華【れんか】~
第1章 始まりはいつも雨
徳姫が十数人の伴の者たちと共に故郷の月山(つきやま)城(じよう)を後にしたのは今から八日ほど前のこと。産声を上げたそのときからずっと傍にいてまめやかに仕えてきてくれた乳人葛木(かつらぎ)を初め腹心の侍女茜以下、いずれも心から信頼できる者たちばかりだ。
徳姫は月山城城主一(いつ)色嘉政(しきよしまさ)の息女である。母は正室楓(かえで)の方。楓の方は、京の都は権中納言三条卿の庶子に当たり、楓の方の異母姉登美子は畏れ多くも宮中で典侍(ないしのすけ)を務めているときに時の帝の寵幸を得て内親王の生母となった。
徳姫は月山城城主一(いつ)色嘉政(しきよしまさ)の息女である。母は正室楓(かえで)の方。楓の方は、京の都は権中納言三条卿の庶子に当たり、楓の方の異母姉登美子は畏れ多くも宮中で典侍(ないしのすけ)を務めているときに時の帝の寵幸を得て内親王の生母となった。