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姫はひそやかに咲き乱れる~戦国恋華【れんか】~
第4章 花冷え
 始まる前から終わってしまった恋、恋とも呼べずに潰えてしまった想い。
 徳姫は我知らず心に浮かんだ恋の歌を手許の紙に書き付けていた。
「何故、とお訊きにはならないのですね」
 保邦が心に滲みるような深い声音で言った。この男は、声までも人を魅了する。
 この声を聞くのもこれが最後―と、徳姫は耳を傾けた。
 秀でた額、整った鼻梁、思慮深さを物語るかのように細められた眼(まなこ)はすっきりと切れ上がって凛々しい。
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