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姫はひそやかに咲き乱れる~戦国恋華【れんか】~
第1章 始まりはいつも雨
男二人は互いに何やら愉しげに話しながら、奥へと連れ立って消えた。遠くから、別人のような邦昭のいかにも愉快そうな笑い声が響いてくる。
佐治郎とは一体、何者なのだろう。
不思議な男だった。あの男と一緒にいると、誰もが春風に包まれたように、心和む。
現に、佐治郎はほんの一瞬で、剣呑な雰囲気が垂れ込めていたこの場を和ませ、緊張を解かせた。あの鬼と怖れられる邦昭でさえもが佐治郎といると、心から愉しげに笑い、喋る。